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【研究内容】

やわらかく, 水を多く含む高分子材料(ハイドロゲル)を

つくる・しらべる・つかう

 高分子ゲルは高分子鎖同士が手を繋ぎあったネットワーク(架橋)構造をもつ材料です。高分子が組むネットワーク空間は溶媒(水)で満たされているため、生体親和性が高く、食品・化粧品・医療分野などで使用されています。また、温度やpHなどの外部環境を認識し、体積や新疎水性を大きく変化させるため、薬剤輸送・センサー・細胞足場材料などへの利用も期待されています。
 当研究室ではこれら高分子鎖が架橋されたハイドロゲルやエラストマーを「つくり」、肉眼では観察できないナノレベルの構造や物性を「しらべ」、再設計することで新しい機能を発見し、応用展開に向けて「つかう」ことを目的に研究しています。

 例えば、試料に光を当て、返ってくる散乱光を観測する動的光散乱法を使い、非接触でゲルの中の高分子のダイナミクス・運動を計測することで、ゲルのネットワーク構造や環境応答性を評価しています。最近では、動的粘弾性測定によって応用する際に重要なゲルのかたさ/やわらかさを計測し、設計指針を確立させています(下図)。
現在はこのようなゲルの機能を利用した応用を目指し、研究しています。

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ゲルをつくる

例1) ゲル化する条件を探す

ゲル材料を作製する典型的な手法にフリーラジカル重合があります。この手法は、簡便かつ有機溶剤などを使用しないため生体や環境に低負荷で、大量合成ができる利点があります。

本研究は、生体親和性が高く、周囲の温度に応答するポリマー(以下, OEG)のフリーラジカル重合におけるゲル化条件を初めて明らかにしました(下図参照)。OEGは親水性側鎖のエチレングリコール基の数(側鎖長)を変えることで材料全体の物性や機能が大きく異なりますが、ゲル化できる条件やゲル化速度も側鎖長で大きく異なりました。長い側鎖はポリマーをより広げて近づきやすくし、互いに手を繋ぎ合う(架橋)反応が起こりやすくなる事や、ラジカル重合中に側鎖からポリマーが成長する架橋反応が生じることが要因です。この特殊な架橋反応を活かし、従来ゲル合成に必須の架橋剤を必要とせずゲル(超低架橋ゲル)を合成することに成功しました。この超低架橋ゲルは、架橋剤を使ってつくったゲルよりも水をより多く含み、迅速な温度応答性を示すなど、優れた機能を発揮しました。

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ゲルをつかう

例1)脆いゲルを強くするために

ゲルの内部はほとんどが水で、ネットワーク構造は不均一性が高いため、力を加えるとすぐに壊れてしまいます。これはゲルをつかう際に大きな欠点となり得ます。そのような材料の強度を評価するため、材料を圧縮する試験が用いられています。

本研究は、側鎖が長いポリマーを架橋したゲルの場合、力を加えてゲルを圧縮しても、壊れにくく、元に戻れる復元力が高いことを明らかにしました(下図参照)。ゲル中の長い側鎖は、高い立体障害によりポリマーを剛直にさせ、ポリマー同士の絡まり合いを防ぐ効果を発揮したことで、強靭なゲルとなりました。また、長い側鎖のポリマーと化学構造が異なるポリマーを混ぜた共重合ゲルにおいても長い側鎖がゲル全体を補強することも確かめ、汎用的にゲルを強くすることができます。

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